あなた、その川を渡らないで

映画 感動 エッセイ

1週間のうち、ほとんどの夜をひとりで過ごすことが多い私は、よく映画鑑賞をします。さて今日は何を観よう…韓服を着た老夫婦…これにしてみよう。何ともほのぼのとした韓国の老夫婦。田舎に住み、いつもペアの韓服を着て、良よく手をつないで出かけます。結構なお年だろうに…こんな俳優さんがいるんだろうか…と思って観ていたところ、あれ?これ演技?…飼ってた犬を泣く泣く埋めるシーンで、あ…あの犬は本物だ…いつもならそのあたりで検索をかけるのですが、そのまま物語に入り込んでいました。誕生日にけんかする大の大人の子供たち。「お母さんの誕生日だというのに…」悲しそうなおじいちゃん。日増しに咳がひどくなり、瘦せ衰えていくおじいちゃん。そばで看病するおばあちゃん。おじいちゃんの旅立ちが近いことを悟り、あの世で着るものに困らないようにと、おじいちゃんの服を燃やします。そしていよいよ最後の時に「私も連れて行って」とすがるおばあちゃんに、おじいちゃんは「ああ、一緒に逝こう」と言いました。そしておじいちゃんは亡くなり死に装束にくるまれます。泣きながら顔をなでるおばあちゃん。…え?…え?…おじいちゃん本当に死んじゃった…?雪の降るお墓のそばで、またおじいちゃんの服を燃やすおばあちゃん「これは春物の肌着だよ。これは暖かくなったら着てね。」「子供たちに会ったら、これを渡してね。」と言いながら「じゃあ、私は行くよ。」と言い去ろうとするのですが、泣いて、泣いて、泣いて、座り込んでしまいます。「あなたを絶対忘れないからね。世界で一番あなたが好きだよ。」と。

エンドロールに 故チョ・ビョンマン氏のご冥福をお祈りします…の文字。ああ、やっぱり本当に本当の話だったんだ。何ともいえない感動に包まれました。ドキュメンタリー映画だったんですね。

あんなつくりの家で寒くないんだろうか、草みたいなナムルだけで肉もなく、それでもおいしそうに炊けたね~と仲良く食卓を囲むふたり。落ち葉を掛け合ったり、水を掛け合ったり、お互いの髪に花を挿し合ったり、いつもにこにこ暮らすふたり。外のトイレに行く時も怖いから付いてきてと甘えるおばあちゃん。眠るおばあちゃの髪をなでるおじいちゃん。子供を6人も亡くし、当時は買ってあげられなかったとパジャマを買うふたり。実際に76年間もの間、亡くなる瞬間まで愛を育み続けてきたふたりは、この映画を観た多くの人にこんな夫婦になりたいと思わせたことでしょう。

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